商品開発STORY case 1「古い殻を破る」

2020年12月9日クリエイター,デザイナー,商品開発,未分類,製品に込めた想いtoiki,コラボレーション,商品開発,羽織

世の中が便利になり、モノが溢れている今。
消費者のみなさんに興味を持っていただき、実際に手にとっていただくためには、
他の商品との差別化はとても大事です。
そのためには、古い殻を破り、新しい取り組みや新商品開発をしていく必要があります。
そんな新たな商品開発に果敢に挑む経営者たちを順にご紹介していきたいと思います。

手染めにこだわった「toiki」ブランド

toikiの羽織

その昔、埼玉県本庄市は、交通拠点として栄え、中山道を中心に越後、信州、周辺各地への分岐点となった地域で、中山道最大の宿場町でした。また、本庄市は、かつて養蚕が盛んだった土地です。「本庄絣(埼玉県指定の伝統工芸)」をはじめ、多くの着物生地(織物)の生産が行われてきました。その、織物の生産が盛んだった頃に創業したのが、小渕捺染株式会社です。創業してから今に至るまで、昔ながらの技法で、手染めにこだわり、ものづくりをしている会社です。

着物文化の衰退とともに、本庄市内にいくつもあった染物屋は次第になくなり、今では小渕捺染のみとなりました。着物を染めることが少なくなってからは、暖簾・法被・半纏が主力商品ですが、その暖簾・法被・半纏にも、需要に限りが出てきました。小渕捺染は、昔から変わらず根っからの「染物屋」で、染めの型を作る職人、色調合の職人、染めの職人、縫製の職人、多くの職人がいます。新しい取り組みをしていかなければ、会社が縮小してしまうだけでなく、職人の技術を後世に残すこともできません。

新しい取り組みには、今までの殻を破って挑戦する必要がありました。
「多くの方に手染めの商品の良さを知ってもらいたい」
この気持ちを胸に新商品開発を進め、たどり着いたのが「toiki」ブランドです。

toikiプロデュース・商品デザイン
(アトリエDEMETAN 代表 内原 絵美)    

新商品のプロデュースにあたって
「どのような商品を作るべきだろうか」と考えた時に、
・手染色の良さがわかるもの
・既製品にはない、職人が介在する良さが伝わるもの
・縫製の良さが伝わるもの
であるべきだと考え、この3点はブレずにいようと思いました。そして、デザインにおいても、今まで小渕捺染が主力製品にしてきた、暖簾や法被・半纏のテイストや縫製技法を少し残すデザインにしたいなと。
そして何より、「普段使いできるもの」であることが重要だろうと、「和」の要素は残しつつも、普段の洋服にも合わせやすい羽織を開発しました。シンプルな服装に羽織ってもインパクトがありますし、家でのリラックスタイムに部屋着の上にサラッと羽織ってもいいかもしれません。ビーチサイドで水着に羽織ってもいいですし、スーツにハットを被って羽織を合わせても。着こなし方はたくさんあると思います。自由な発想で、普段のスタイルに羽織を合わせていただければと思います。
職人の心意気を羽織るという「粋」を味わってみてください。

職人(小渕捺染株式会社 代表取締役 社長 小渕 健司) 

<今までの殻を破るということ>

本庄市内で昔から続く染色会社として、暖簾や法被・半纏を作り続けてきました。ただ、これから先、これらの製品で安定した受注が望めるのかと考えた時に、「何か新しいことをしなければ」と思ったんです。父から会社を継ぎ、社長に就任してから、その想いは日に日に大きくなりました。
受注スタイルにおいても、今まで、基本的に昔からのお得意様から発注いただくことがほとんどでした。ですが、
「受け身でいるのではなく、自分たちから発信できるスタイルに変えられないだろうか」と、攻めの商品開発に踏み切る決意をしました。これは、今までの会社の殻を破って挑戦していこうという、社をあげた新たな試みです。

<製品作りと社員の想い>

新しいものづくりへの挑戦には、社内の職人たちへの同意も必要でしたし、実際に試作品作りから手伝ってもらう必要があります。第1号の羽織の試作が完成した時には、「こんな商品売れるの?」と思った社員もいたと思います。
通常業務と並行した新たな商品作りは、想像以上に手間も時間もかかって大変でした。ですが、染めの色味を変えたり、サイズを調整したりと、試作を何度も重ねるうちに、だんだんと改良され良くなっていく商品を目の当たりにすると、自然に社内の皆も楽しんでこのプロジェクトに参加してくれるようになりましたね。

<これからも手染めにこだわっていく>

小渕捺染の手染め製品の良さは、「品質」にあります。長年製品作りに携わってきた職人たちが「染め」、「縫製」した製品は自信を持ってお届けできます。
世の中の「プリント技術」がどんなに発展しても、「手染め」は超えられないと信じています。それは「風合い」や「味」があるかないかではないでしょうか。
これから先も、「手染め」にこだわり、ものづくりを続けていきたいと思っています。

パターン協力(株式会社グラトリー 代表取締役 荒井 典雄)   

<プロジェクトへ参加したきっかけ>

「手染めの羽織を作りたいので、パターンを引いてもらえませんか?」と、デザイナーの内原さんからお声掛けいただき、今回、ご協力させていただきました。僕自身、メンズのアパレルブランド(「ICHIMILE GRATORY」:www.gratory.com)を10年以上展開していますので、お役に立てることがあればと思い快諾しました。僕は本庄市の出身なのですが、本庄にこのような地域資源や伝統工芸があることを、この機会まで知りませんでした。小渕捺染さんの技術に、内原さんのエッセンスを入れて、ぜひ世界まで広がって行くことを応援しています。その中で、僕が協力出来ることがあれば、これからもぜひ協力させて頂ければと思っています。

<羽織のパターンのこだわり>

パターンと言っても聞き慣れない方が多いと思いますが、服を作る為の設計図のようなもので、生地を裁断する時に使用する型紙のことです。今回、内原さんに描いて頂いたデザイン画を元に、僕がパターンを制作いたしました。
和服の羽織で、僕が印象的だと思うのは、「直線的」、「幅の広さ」です。和服の歴史を専門で勉強している訳ではないですが、古くからある和服の成り立ちを想像すると、「直線的」なのは、縫製技術がまだ低かった時代に1番簡単に反物を縫製出来るように、直線的になっていたのではないかと思います。「幅の広さ」は、サイズ展開という概念がまだなかった時代に、自由にサイズ調整出来るように幅を広く作り、前重なりと帯でサイズ調整していた為かと思います。
このようにまだ服が発展し切れていない時代の産物として、直線は独特の襟の立体感になっていたり、身幅の広さは、独特のドレープ感を生み出し、どちらもとても美しいと思います。そんな歴史にも思いを馳せながら、今回は和服の良さをベースに洋服のようにも着れるよう、ややカーブ線も意識しミックスして仕上げました。お手に取って頂いた際は、その辺りにも注目して楽しんで頂けましたら嬉しい限りです。

シンプルな服にさっと羽織るだけで粋になる
自らモデルもこなす、小渕捺染株式会社社長の小渕さん

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